管理職向け
若手社員育成のための基礎知識

報告をしなさいと言っているのに、しない若手

報連相とは、報告連絡相談の略です。
このことは多くのビジネスマンの基本となっています。
「ちゃんと報連相をしなさい」と何度口を酸っぱくして伝えても、報告がない若手はどう考えたらいいでしょうか?

大きく分けて視点は二つです。

1点は本人の特性であること。
まず、一番に思いつくのは性格でしょう。
言われたことを素直に実行できない怠慢さがあるかもしれません。
しかし、性格の問題だけでは片づけられないことがあります。
それが、発達特性と言って脳の先天的な特性が要因の可能性もあります。
気を付けていても忘れてしまったり、報連相すべきものとそうでないものの仕分けが苦手、ということも考えられるでしょう。

2点目は、外的要因です。
報告したくてもできなかった何かしらの要因があったのかもしれません。逆らえない先輩に、「報告なんていちいちしなくていいんだわ」と言われていたらどうでしょうか。
本当は報告すべきとは頭でわかっていても、従わざるを得ないという状況だったかもしれません。

若手が何度言っても直らない若手...一体何が?

例えば、何度言っても細かいミスが減らず、途中やりの業務が忘れ去られてしまっている若手は、皆様の会社にいますでしょうか。

これも先ほどのように2つの視点で考えると 大雑把な性格で片づけるのではなく、特性で考えます。
衝動性や多動性があり、しっかり認識しているつもりでも確認の精度が低かったり、思い込みで進めてしまっている可能性もあるでしょう。

また、情報量が多い中で一つのデータをピックアップしたり、電子上のデータへの認識力が低い可能性もあります。

そして、外的要因として考えられるのは、その仕事のやりかた自体が本人の特性とマッチしていない可能性もあるのです。

例えば、細かい作業をしている中で、電話応対があったり、来客対応、また上司からの差し込み事案の発生など、その業務に集中したくてもできない状況でマルチに業務をまわしていく必要がある場合は、上記の特性を持っている方にとっては非常に酷な環境です。

個人の特性のみに焦点をあてるといつまでもその人が悪者になってしまう

つまり、若手社員の課題や問題は、本人の性格だけの問題ではないということです。

こんな式があります。

B=f(P・E)

BとはBehavior (行動)
fとはFunction (関数)
PとはPersonality (人間性、人格、個性、価値観、性格など)
EとはEnvironment (周囲の状況、集団の規制、人間関係、風土など)
です。

クルトレビンの場の法則といいます。
個人の行動の結果は、本人の特性とその人を取り巻くか環境との相互作用の結果なのです。

「あいつはやる気がない」
「最近の若者は意欲がない」
「たるんでいるんだろう」
等と個人のせいにした決めつけでは いつもその人が悪者になってしまいます。

結果、若手本人は、叱られる経験を繰り返し、叱る方もストレスを感じ、お互いに傷つけあってしまいまうのです。

部下の育成はキャリア面だけではなくメンタル面も見る

上司の役割は、今や部下の業務的成長と目標達成の支援にとどまりません。

キャリアアップだけではなく、メンタルヘルスのマネジメントも重要な観点です。

キャリアとメンタル、どう違うのでしょうか?

キャリアとは

一般的には「職業的経歴」の事を指します。
そのためキャリアアップとは、その軌跡をより良いものとしていくために、資格を取得したり、上位の職位についたり、できる業務を広げていくことを示しています。

しかしながら、実際には、キャリアとは人生そのものを指すことが多いため、職業に限らず、これからの働き方や生き方をより良いものとしていくことを指すこともあります。

メンタルヘルスとは

一方、メンタルヘルスとは、精神的、心理的健康状態のことを指します。
業務そのものに限らず、人間関係や、作業環境、その時のプライベートでの出来事などで、人の心は揺れ動きます。
過度なストレスの積み重ねは、メンタル不調を伴い、様々な精神疾患を起こします。

そのため、業務の適切な管理には、部下のメンタル状態の把握を一番近くにいる管理職の方がみている必要があります。

特に異常管理の考え方と同様に、
「いつもと様子がおかしい」
「このままだと危ない」
ということにいち早く気づくことが大切です。

そのためには、普段の部下の様子の把握と、メンタルヘルスの状態を見立てる視点の習得が必要です。

キャリアとメンタルをカバーする1on1ミーティングとは

1on1ミーティングとは
部下と上司が1対1の面談を場を設けることを言います。
昨今では、多くの企業で取り入れられてきました。

上司ではなく、部下本人を主体として行われる面談で
内容は業務や評価とは限らず、業務上の心配ごとや不安要素などの感情面を扱うこともあります。

その中には、前述のような発達特性について扱ったり、上記のメンタル状態について触れる機会もあるでしょう。

1on1ミーティングでは上司側はあまり先導しすぎずに、部下本人の言葉についていくような形で基本は進めていきます。

話をきいていくと、部下が勘違いをしていることや思い込みで話していることに気づくことがあります。
それも、頭ごなしに否定するのではなく、話を聴いた上で、適切にフィードバックをして、認識のギャップを減らしていくのです。

まとめ

部下の教育には、仕事の成長だけが対象ではなくなってきました。
そこには、感情面や特性の要素が大きく関係していきます。
キャリアとメンタルは表裏一体です。
どちらかでは片手落ちです。

部下を持ったら人間の要素も学ぶ必要があるでしょう。