新任リーダー向け
若手社員育成のための基礎知識

若手が上司に期待する事

新入社員意識調査によると、

  • 意見・要望を傾聴してくれる
  • 仕事を丁寧に教えてくれる
  • 意見に対して動いてくれる
  • 仕事を任せて見守ってくれる
等などが上位に来ています。
ここ数年でもかなりの変化が起きています。

これまでのような、仕事に身を捧げたり、目標達成に向けて情熱を傾けたり、失敗を恐れずに突き進む、というような考え方とはかなりのギャップを感じます。

一方、どんどん下がってきているものは、
「場合によっては叱ってくれる」という項目が顕著です。

つまり、いかなる場合にも叱ってくれるな、ということです。

今では叱ると逆切れ、もしくは反抗勢力として仲間をつくっていくこともあります。
叱られ方にもよりますが、叱られる=自分の存在を脅かされる、否定されている、と捉える方も多いようです。

逆に、心配であること、不安を抱えている事、苦手で本当はやりたくないこと、など感情論を含めて理解してほしいと思っているかもしれません。
これらの考え方や価値観のギャップから、現場では多くのコミュニケーションギャップが起きています。

例えば、
若手社員が質問をしてきたときに、「まずは自分でかんがえてやってみよう」と伝えたとします。

通常では、教育的な視点での声掛けのはずが、上記の価値観の若手がどのように受け取ってしまうのかを想像できますか?

「私の仕事に興味ないんだな」

このように受け取られたケースがありました。
これからの若手社員とのかかわり方では、価値観の違いをふまえた伝え方が重要になります。

若手社員の早期離職の理由とは?

若手社員は今や20代のうちに、約半数が転職する時代となりました。
中でも、3年以内の離職率は3割と言われています。

石の上にも三年という言葉はもはや死語となりつつあります。

彼らはなぜ早期離職を決断するに至るのでしょうか。
過去多くの若者たちの声を聞いてきた結果、一つのキーワードにたどり着きました。

それは「居場所感の欠如」です。

マズローの欲求5段階説でいうところの、「社会的欲求」です。

その会社、その職場、そのメンバーの中に、自分の居場所があるかどうか
また、居場所として感じられるかどうか
が重要な視点となります。

叱られるのが嫌なのは、叱られるという行為そのものではなく、叱られたことによって、自分は必要ない、できないというレッテルを貼られ、この場に居られない、と感じてしまったり、 せっかく勇気を出して質問しにいったのに、「自分で考えて」と一蹴されてしまうと、自分に関心がなく、見捨てられたと思ってしまう。

少し極端ですが、早期離職された若者の声としては、少なくありません。

彼らに居場所感を当たられる職場風土と、コミュニケーションの仕方を視点に持っておくことが必要です。

丸投げではなく、○○げを渡す

「自分で考えてやってみて」
「とりあえずやってみて」
また、口頭で立て続けにやることだけを説明される
このような指示の出し方は、
「丸投げ感」を与えてしまいます。

丸投げ、やらされ感はどの方も嫌だとは思いますが、現代の若者はとくに嫌うどころか上記でも述べたように「私の仕事に興味がない」とうがった捉え方をしてしまう可能性もあります。

そこで、
丸投げではなく、「お土産」を渡しましょう。

お土産とは、指示を出す際のピントのようなものです。

例えば

  • 例を示す
  • 組織内の人的資源に繋げる
  • 組織内の物的資源に繋げる   です。

具体的に見ていきましょう。

例を示す

これは答えを渡すのではなく、あくまでゴールイメージを持って帰ってもらうことに繋がります。

  • ○○の会議だったら例えば○○のデータをいれたりしたらどうかな?
  • 例えばこういう伝え方もいいんじゃないかな
  • 過去の似たケースでこういう対応したことがあったかな
のようなかたちです。

先が見えないからこそ質問をしてきているため、とくに不安感の強い方には、丸っと任せるのではなく、何かしらのイメージだけでも伝わると良いです。

組織内の人的資源に繋げる

会社の中で誰が何を知っているか、を知っていることです。専門用語でいうとトランザクティブメモリーと言います。
若手の方からの相談で非常に多いのが「だれに聞いたらいいのかわからない」という状態です。
これは、聞くタイミングを逃してしまっているだけではなく、そもそも今のこの仕事はだれにヘルプを出していいのか、がわかっていない状態であることが多いです。
そのため、仕事を任せる際には、「Aさんはこの件以前やってたし、詳しいと思うよ。困ったら聞いてみたら」と人の資源を活用してもらう視点を持ち帰ってもらいます。

また、不安感が強い方には、先にAさんにも、「○○君がこの件やることになったけど、ヘルプ出して来たらお願いね」と根回しをして置いたり、業務着手前に、上司、若手社員本人、Aさんの顔合わせをしておいても良いでしょう。

組織内の物的資源に繋げる

これは言わずもがなでしょう。「過去の資料がその棚に入っているよ」「クラウドの○○ファイルに入っているよ」と物的資源に繋げるケースです。
現代の若者は、ネット上に整理されている情報から欲しいものを引っ張ってくる力はとても強いです。そのため、クラウド等に整理された情報の場所さえ把握すれば、自分で掘っていくことが出来る可能性が高いです。

まとめ

上司への期待は、その裏側にある「不安感」が背景となっています。
そのため、これまで皆さんが当たり前のように感じていたことが、彼らからすると思っていもいないような捉え方をされてしまう可能性があります。

不安感が強い方に、手取り足取りやさしく丁寧に、とは申しませんが、最初はお土産を多く渡して、自立度に応じで少しずつ自分で考え、行動できるように手を放していってください。
ただ、いつも見守っているよというメッセージは常に発信していただけますと幸いです。