現場の知恵を集めた手順書の効果とは

社員の頭の中、日々遂行される業務や業務手順の中には、重要な知識が潜んでいます。
このような重要な知識を発見し維持し、皆で共有利用できるようにするには
どうしたら良いでしょうか?

今回は運送会社様の小集団カイゼン活動の事例を紹介します。

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化学薬品の倉庫において、フォークリフトで入出庫作業を担当しているチームのテーマは、
「破袋(品物を入れている袋が破れてしまうこと)の低減」
です。

破袋の発生要因は何でしょうか?
リフト作業の要因、パレットの要因、雨濡れ、袋の種類、危険個所、荷役の要因、湿気の要因など。
その中で、数多く発生し、自分たちで工夫できる「リフト作業の要因」に絞り込んで
破袋を減らすアイディアを出し合いました。

皆、作業のやり方を教わったことはなく、全員が自己流!
それだけに、それぞれが経験から得た異なる知恵があり、全部で47個のアイディアが出されました。
デリケートな化学薬品の取り扱いには、たくさんのノウハウがあることがわかりました。
こうして出されたアイディアを皆が使え、残るもの(組織の知識)にするにはどうしたら良いでしょうか?

わかりやすく誰もが使える「作業手順書」をつくることです。
そこで、まずリフトによる入出庫作業のフローをつくりました。
そして、47個の知恵を同フローの各ステップにあてはめていき、
全員の知恵を集めた手順書ができあがりました。



このように、現場の意見を集めた手順書づくりは、
現場リーダーが1人でつくってしまう手順書(ほとんどはそのつくりかたです)に比べて、
多くの視点からの知恵が集まります。
また、皆でつくった手順書なので守られやすいです。
さらに、つくるプロセスにおいて現場の意識も向上し、それだけで効果の出ることも多くあり、たいへんお勧めのやり方です。
こうして、できあがった手順書を運用した結果、「破袋が5分の1以下に低減する」効果が得られました。
また波及効果として、誤出荷がなくなりました。

以下は、この活動からのメンバーの学びをまとめたものです。

 

そして
3年後。
再び、同じテーマで活動に取り組むことになりました。
破袋は激減したとはいえ、まだゼロではありません。
あらためて、なぜ?破袋が発生するのか?要因出しをしてみました。
すると、パレットを下から順に1段目、2段目と積んで行き、3、4段目置くときに以下の問題があることがわかりました。
・パレットを上げ過ぎた状態で奥の製品に当たる
・押し付けたときに奥のパレットに当たる
・下げ過ぎて2段目の上面と擦る

さらに
・1段目を荷つりから少しスキマあけておかないと、
3、4段目置くときに調整できる余地がなくなることもわかりました。

そこで
「破袋を予防する」手順としては?
・1段目を荷つりから少しスキマあける
・3、4段目置くとき
 →・上げ過ぎないようにする
  ・押し付けないようにする
  ・下げ過ぎないようにする

そして、以前つくった手順書を確認してみますと、
今回出された、大切なポイントが書かれていないことがわかりました。
そこで、この4つのポイントを作業手順書に追記しました。

この事例に限らず、既存の作業手順書に、効果的な作業を行ううえで、重要な知識が書かれていないことが多くあります。
現場参加型のカイゼン活動で、現場の知恵を集めて、既存の手順書を見直す活動が、
現場に潜んでいる重要な知識「組織の知識」を発見し維持し、皆で利用できるようにすることにつながります。
ちなみに、この活動をはじめてから、毎月、破袋ゼロが続いています。

ぜひ、現場の知恵を集めて、既存の作業手順書を進化させましょう!!